企業レベルのMission、Vision、Valueを部門やチームレベルに落とし込む作業が割とむずかしい件・前編

モダンなQAに変わるには vol.4

Hiroyuki TAKAHASHI
11 min readApr 27, 2020
昨年、娘、友人と登りました。今年は山小屋行けないかな… Photo by Hiroyuki TAKAHASHI

組織の進むべき方向を示し強い組織にするためには Mission、Vision、Value がとても大事です……と、アタマの中では何となく分かっていても、これを部門とかグループとかチームにどうやって落とし込むか?となると、とたんに敷居が上がるものです。

「部門目標は明確なんだけど、これって会社の方向性とあってるのかなぁ?」

と悶々としている人は少なからず居るのではないでしょうか。

そもそも、この手の話ってネットにはあんまり情報ないですよね。だれも教えてくれないし。(きっとビジネススクールとか行くと教えてくれるのかな?)

そこで、悩める部門長やライン・マネジャーさんなどのヒントになればと思い、今この文章を書いています。また、紹介するフレームワークを使ってメンバーとワークショップをしながらMissionなどを考えるとチームビルディングにも使えると思います。

(チームビルディングといえば、今年の春にびばさんが書いたチームビルディングの素敵な実践ガイド本が出ました。とても役に立つ本なのでチームビルディングに興味ある方はぜひ手にとってみてください。)

さて、我々SPQIではFY2019にアジャイル・トランスフォーメーションを目指しやすいように組織改革を取り組んできました。これによりメンバーには様々な点で負担をかけましたが、チャレンジして頂いた年だと思っています。

そういえば、去年の今頃はメンバー全員で札幌合宿してたんですよねー。……早いなぁ、1年経つの。

2019年4月合宿で書いたメンバー全員の「アクション宣言」

合宿で書いてもらった「アクション宣言」は、一年経ってどうなったでしょうか?今一度、ふりかえって頂ければと思います。

さて、期は変わってFY2020。

さすがに、この状況は誰も想像できなかったと思います。

COVID-19対策で、様々な制約事項が発生し、それに伴い様々な常識が変わりつつあります。たとえば、

・ 人に会えない前提で仕事をしないと業務が回らない → 突きつけられたチーム活動とコミュニケーションの質向上・ リモートワークに対応できる組織とそうでない組織で差が出ている → インフラだけの問題ではなく文化も浮き彫りに・ 海外に行けない(県外にも行けない)民・民の問題だったらしい日本のハンコ文化

突然、世界規模で訪れた‘The New Normal’、一度変わってしまった常識は、元には戻らないと言われはじめています。

私たちウイングアーク1stが提供できるソフトウェアの「価値」は、これからの時代にきっと役に立つものばかりです。すなわち私たちは歩みを止めるわけにはいきません。今こそ、組織のステップアップを目指して行きたいと思ってます。

これまで以上に、個人が考えて、考えて、考え抜いて変化に対応した行動をしないと生き残れない時代が到来したのかもしれません。

しかし、組織の中で「考えろ」というメッセージを出したとき、実はとても重要な要素があります。それが「理念戦略」です。

ウイングアーク1stではwevoxというツールを使って定期的な社員のエンゲージメントサーベイを行っています。

私はSPQIの相対的なスコア変化をキャッチし、問題があればすぐ手を打つように心がけています。(とは言え、様々な要素が絡み合って出てくるスコアなので、そう簡単には対策が出てこないのですけども……)

wevoxではエンゲージメントを大きく9つのカテゴリに分けて分類していますが、そのなかに「理念戦略」というものがあります。

「理念戦略」には、Mission、Visionへの共感や、会社の方針、事業戦略への納得感がスコアとして現れます。

ここが低いと変化への対応に、いろいろと問題が発生すると思っています。この、COVID-19に振り回されている今の状況でこそ、「理念戦略」が伝わっていないと大変なのです。

なぜなら、「理念戦略」というのは思考の羅針盤だからです。企業活動において、社員ひとりひとりに「考えろ」といった時、その方向を示すのが「理念戦略」です。

もし、「理念戦略」を理解できていないと、恐らく社員の行動は変わりません。同じ方向を向いていないのですから目的を達成するまえに、迷子になる人が続出します。

SPQIの「理念戦略」のスコアは、決して低くはないのですが、こんな時代だからこそ、さらに高めないと行けないと思っています。これまでも、理念戦略は考えてメンバーには伝えてきたつもりです。

しかし、スコアがもっと上げるには私の伝え方を見直す必要性を強く感じました。そこで FY2020 は、まず「言葉」の見直しをしようと思いました。

ジョージ・マロリーはエベレストに登る理由を

Because it’s there.
(そこにエベレストがあるから)

と答えたそうですが、メンバーに対し、仕事をすべき理念をそこに仕事があるからとか説明しても「はぁ?」で終わるかと思います。

しかし実際問題、誰かにとっての私の言葉は、これぐらい「ぼやっ」としている可能性がありあります。「伝わらない」のは案外、言葉のせいなのです。

そこで、会社の Mission、Vision、Value の言葉を踏襲しながら部門の Mission、Vision、Value を作るには、まず会社レベルの Mission、Vision、Value を良く理解する必要があります。

弊社のトップラインの Mission、Vision、Value は次の通りです。

Mission:   The Data Empowerment Company
データの価値を最大化し、ビジネスにイノベーションを起こすことで世の中を変革させ、
新しい未来を作っていく
Vision: Empower Data, Innovate the Business, Shape the Future.
情報に価値を、企業に変革を、社会に未来を。
(Core)Value: Build the Trust
相手の期待を超える結果を出し、信頼される。

さて、これらの関係性をどのように理解すれば良いのでしょう?

たとえば、ググるとこんなピラミッドみたいな図が沢山出てきます。

このピラミッドのまま、全社展開を考えるとこんな感じでしょうか?

……ぜんぜん頭に入って来なさそう。

上下レイヤの関連性も良くわからないし、ピラミッドで考えるとはじめからぼやっとした軽い言葉を作ってしまいメンバーに浸透しなさそうです。

手元に書籍「組織は「言葉」から変わる。」というエンゲージメントの入門本があります。

ストーリー仕立てで分かりやすく、なかでもMission、Vision、Valueを「言葉」と定義しており、企業理念の浸透はこの「言葉を如何にわかりやすく作るか」が大事である……と説いている本です。今期の部門目標を考えるのに、すごく参考にさせて頂きました。

(この本との出会いは偶然でして、登場人物のモデルになった1人とお友達だったので存在を知りました。エンゲージメントの勉強になるので、ぜひ手にとってみてください)

この本では、言葉とはMission、Vision、Valueだけでなく経営理念や戦略や戦術もひっくるめて「言葉」と定義しています。

言葉づくり大事な要素は7種類あり、下図のようなフレームワークで考えます。

黒田 天兵 氏. 組織は「言葉」から変わる。 ストーリーでわかるエンゲージメント入門 図表11を参考に書いた図

Mission、Vision、Value はピーター・ドラッガーがマネジメントに不可欠な概念として定義した概念ですが、この本では次のように解説されています

『ミッション』とは、要は、何のためにその組織は存在しているか?『ビジョン』は、その組織は何を目指していてどんな姿になりたいか?『バリュー』は、その組織が今後も大切にしていきたい価値観や文化などを指す。

つまり、図に当てはめるとこうなります。

黒田 天兵 氏. 組織は「言葉」から変わる。 ストーリーでわかるエンゲージメント入門 図表12を参考に書いた図

こうやって見ると、ピラミッド図ではとうてい分からない、Mission、Vision、Value の関係とそれを埋める重要な要素が見えてきます。

それではウイングアーク1stの理念をこの図に当てはめてみましょう。まず図の1〜7に当てはまる言葉を表にしてみました。

ウイングアーク1stの「言葉」

さらに、さきほどの図 に言葉をマッピング(黄色)してみます。

黒田 天兵 氏. 組織は「言葉」から変わる。 ストーリーでわかるエンゲージメント入門 図表12にウイングアークの「言葉」をマッピングしたもの

このように、フレームワークに当てはめると、とても理解しやすい事がわかります。

(1と5にも当然「言葉」はありますが、弊社戦略に直結するので非公開とさせて頂きます)

言葉を分類するためのフレームワーク」に当てはめれば、部門やグループに落とし込みも出来そうです。

例えば「6.理想的な行動」と「7.大切にしたい価値観、文化、強み」は、部門、グループ、個人に至るまで不変なものだと気づけます。

「1.現状」の認識と「2.なりたい姿」は部門の達成しなければいけない目的の源泉となります。

そして「2.なりたい姿」を実現するために「5.戦略、戦術」をどう実行する?が部門の目標になるでしょう。

そして状況に合わせ「1.現状」は刻々と変わりますから、それに合わせ2と5も変化させる必要がありそうです。

部門レベルの「言葉」はタスク(アクティビティ)を指す言葉にはなるべくしません。あくまで「思考の羅針盤」を目指します。そうでないと、自律できるメンバーが育たないと思うのです。

そんなわけで、「言葉を分類するためのフレームワーク」を使ってSPQIの「言葉」を作ってみました。

後編につづきます。

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Hiroyuki TAKAHASHI

Visional / ビズリーチ Software Engineer, SPI Coach, Agile Coach, Certified Scrum Professional® — Product Owner, Certified Scrum Professional® — ScrumMaster